会長代行の手からクッキーを受け取り、室の隅に備え付けられている給湯器に向かう。

パソコンのキーをカタカタと叩く正確なリズムが、背中越しに聞こえた。

カップをお湯で温め、お湯を注ぎティーパックを浸すと、華やかな紅茶の薫りと共に鮮やかな色が広がった。

紅茶はあまり嗜まないわたしだが、紅茶の薫りと色は好きだ。

自分用のカップにはドリップコーヒーをセットして、お湯を注いだ。

紅茶が少しでも冷めないうちに、会長代行の席にもっていく。

会長代行はパソコンのキーを叩く手を止め、顔を上げ「ありがとう」と微笑んだ。

ティーカップの横に、クッキーの入った皿をそっと置く。

「1枚だけ頂く。あとはそちらで食べるといい」

会長代行はクッキーをスッと1枚、手に取ると紅茶ソーサーの上に置いた。