詩乃は水分制限、塩分糖分制限を強いられている俺のために、朝晩きちんと食事を用意し、家事全般の面倒を観てくれている。


じゅうぶん感謝はしている。


いくら感謝しても足りないとも思う。


だが、詩乃の俺への感情を受け止め切れずにいる。


彼女は姉だ。


俺は常に、自分自身にそう言い聞かせる。


長年、心配をかけ世話をかけ続けている姉だからこそ、誰より幸せになってほしいと思っている。


薬漬けで酸素吸入なしでは、まともに呼吸もできずに、日常生活をやっと送れているような俺のことなど、捨て置いていい。


捨て置いて、さっさと良い人を見つけて嫁げばいいと思う。


「俺は1人で大丈夫だ。必要があれば家政婦でも介護人でも雇うし、介護施設に入る覚悟もある」


詩乃には何度か、そう言った。


けれども、詩乃は頑として聞き入れなかった。