会長代行の冷静で淡々とした声と、感情を抑えた表情が、詩乃様を突き放す。


詩乃様はふらりと力無く立ち上がり「わかったわ」と呟くと、会長代行室の出口に向かう。


「詩乃、トラブルはチャンスだ。頑張れよ」


会長代行は振り向いた詩乃様に、穏やかな笑顔を向けた。


詩乃様が室を出たのを確認し、会長代行は深く溜め息をつく。


「ったく。何考えてるんだ……毎朝、毎晩、顔を合わせるだけでは足らないとでも言うのか」


呟いた会長代行の声は、いつになく苛立っているように思えた。


「詩乃様とは同居されているんですよね」


「ああ。数年前、体調を崩した後からな……心配をかけているのはわかっているし、献身的なのも感謝している。だがな~、重いんだよな」


ふと零した言葉に、会長代行の本心が滲んでいた。