なのに、会長代行の机には打ち出された書類が幾種類もクリップで止められている。


「あの……」


「誰にも得手不得手はある。君の実力は概ね理解している」


机の上に腕組みをし、私を真っ直ぐに見上げる大きな瞳が、包みこむように優しい。


「あの……会長代行、1つお訊ねしてもよろしいですか」


「何だ、改まって」


俯いた私の顔から目を離さず、じっと見つめる会長代行の視線にドキドキする。


「あの……何故、私を会長代行の秘書に? 私なんかより会長代行の秘書に相応しい方はいくらでもいらっしゃるし、私……配属されてから雑用しか」


会長代行は短く溜め息をつき、机の引き出しからファイルを取り出し、パラパラと捲った。


「芹沢香生子、明城大学教育学部卒。秘書検定2級、英検準2級、珠算3級、パソコン検定3級……」