【短編】空っぽのプール



「…っ!」


「うわっ!ちょ、何すんだよ!」


私は、ホースも持つ手を再びあげてから、指でホースの口を力強く挟んだ。


そのせいで、勢いが強くなった水が新屋の顔を直撃した。



「あ、ごめん。わざと」


「んだよそれ!人が珍しく真剣な話してんのによ」


「新屋の顔があんまりブサイクだったから」


「はぁー?なんか大山、俺への当たり強くない?なに?生理なん?……っ!ごめんて!」


新屋のセリフに再び水をかける私。


自分の顔が少し歪むのがわかる。


それでも私は新屋に水をかけるのをやめない。


新屋が冗談でくだらない嘘をつくのはわかってる。


だけど…。


それがあまりにも新屋の顔とか声とか、本当の話みたいで。



3年生になってまだ3日しか経ってなかった時。


『大山って、メガネなん?』


授業中だけメガネをかけた私に1番早く気付いた新屋は私の顔をマジマジと見てそう言った。


『萌えるな』


わかってる。


馬鹿馬鹿しい、しょうもない。


そんなセリフだけで、好きになっちゃったなんて。



でも、もうなってしまったから、


悔しいけど、


私は、


バカでデリカシーのかけらもない新屋が好きだと認めざるを得ない。


今日だって本当は、


新屋と2人だって聞いて、すごく嬉しかったんだ。