私は対等になりたいの。
ヒロトくんを支配したいわけでも、敬われたいわけでもないんだよ。

そんな気持ちとは裏腹に、染みついてしまった習性は消えず、片づけを終えて戻ってきたヒロトくんを手招く。
歪んだ気持ちのこもる私の手のひらに気づかず、安心した表情で目を閉じる。
穏やかで平和なひと時。
カップルにありがちな、幸せな光景のはずなのに――


切なくなって、気づいたら涙が零れていた。
ぽたっと落ちた雫が、ヒロトくんの腕を伝って流れていく。

「ご主人様・・」

なんだろ、という顔で目を開けたヒロトくんが、事態に気づいて徐々に慌てていく。
髪を梳いていた手に触れながら起き上がり、私に向き合った。

「どうしたんですか。悲しいんですか?」

何も言えなくて、でもその通りで。
なんとか気づいて欲しくて首を振ると、眉を下げて抱きしめてくれた。
黙ったまま、指先で涙を絡めとる優しい心遣いが嬉しいのに、余計に切ない。

「ヒロトくん、おねがいがあるの」

深呼吸をして、はい、と応じるヒロトくんの胸に顔を埋める。
ドクドクと音を立てる心臓に後押しされ、ぎゅっと抱きついた。

「泊まっていって」

ヒロトくんが息を飲むのがはっきり分かった。それはどういう意味を持つのだろう。

飼い主が、弱気な発言をしたから?
飼い主が、女を見せたから?