「やっぱ、嫌ですか?」
「う、ううん。でもほら、ペットって言ったら私が可愛がるはずなのに、ご飯まで作らせて悪いなって・・」

本当に言いたいのはそんなことじゃなく、モラルとして、良い響きじゃないってこと。
だけど、ヒロトくんがあまりにも悲しそうな顔で窺うから、つい誤魔化してしまった。

「いいんですよ、俺が作ってあげたいんです。昨日も言ったけど、俺はご主人様に釣り合うほど大人じゃないから。出来ることは何でもさせて下さい!」
「うん・・」
「あっ、でもウザかったら言ってくださいね・・」

ああ、また目を伏せちゃった。
この顔に、在学中の頃から本当に弱い。
お母さんのためにやったことを怒られた、そんな子供みたいですごく抱きしめたくなってしまう。

「ウザいなんて思わない。ヒロトくんが、今日お迎えに来てくれてすごくうれしかった」

ここのとこずっと、仕事に慣れることで精一杯過ぎて夕方の身体の重みが半端じゃなかった。
だけど今日、書類がいっぱい入って重い荷物をヒロトくんがすいっと持ってくれて、心まで軽くなった気がした。

良かった、とはにかむ顔を見て、私の中で無意識に、飼い主の感情が生まれる。

「・・ねえ・・撫でても良い?」

ピタッとヒロトくんが固まることで私も我に返りかける。
でも、そのまま少し頭を寄せてきたから、意を決して手を伸ばした。