そんな出会いをした子犬が、私の部屋でご飯を作っている。

「えっあの子マジで行ったの?ホントに?犬になりたいって?んでアンタはそれをオッケーしたの!?」
「うん・・」

数時間後、『そっちに迷子の子犬行かなかった?』とLINEを送ってきた礼美に状況を告げると、すぐに電話が来た。

「いや、アンタは犬っぽいからペットとしてならいけるって言ったのは確かにこっちだけどさ!ホントにやるかフツー!」
「私もびっくりしたけど・・でもね、でも・・」

あんな純粋な瞳で言われたら、誰だって断れないよ。
言い訳がましく反論しようとしたその時、良い匂いが漂ってくる。
振り向くとヒロトくんが、パスタが乗ったお皿を持って立っていた。

「ご主人様、出来ましたよ~。ご飯にしましょう!」
「ありがとう!わあー美味しそう!あっ、ちょっと待ってね。礼美と電話してて」
「礼美先輩ですか?そーだ、さっきまで話聞いてもらってたしお礼言わなきゃ・・」

湯気が立つお皿を片手に、ヒロトくんはハッと思い立った顔で呟き始める。
これは代わった方が良いかもしれないと、再びスマホを耳に当てた時にはもう電話は切れていた。
かわりに絵文字もスタンプもない、いかにも『呆れました』感の滲み出たメッセージが送られてくる。

『結局くっついたならそう言いなさいよ!まあご主人様と犬プレイ楽しんで』

「プレイ・・」
「えっ、なんすか?」
「ううん、なんでもない。ヒロトくん、礼美に相談してたんだね」

誤魔化すようにスマホを見つめながら言うと、小さい声で「ハイ・・」と返って来る。
照れさそうな表情が想像できて、ちらりと盗み見ると思い描いたのと同じ、うっすら染まった頬。

「俺、本当にご主人様に会いたくて。迷惑かもしれないけど、どうにかして傍にいたいって言ったら」

ペットになれって勧めたのかあ。