ゴールデンウイークを使って、ゼミで交流をすることになった。
2年以上はバイトが入ってる子が多いせいか参加者はそういなかったけど、1年生はさすがにほぼ全員揃っていた。

たまたまバイトがなかった私も友人とともに参加した。
参加者はバス1台分で収まり、せっかくだからと車内マイクで自己紹介が始まっていく。
そういうのがすごく苦手な私には大変だったけど、皆も緊張してるせいか、無難な言葉で済ませている。

いよいよ私の番になり、軽く立ち上がって辺りを見回した時、こちらをじっと見つめている視線に気づいた。

嘘みたい。あの子だ。
新入生だとは言ってたけど、まさか同じ大学で、ゼミ担まで一緒だったなんて。

しばらく固まってしまい、友人につつかれて慌てて頭を下げる。
次の子を見守る振りをして首を動かすと、彼はまだ私を見ていた。

そのうち順番が来て、初めて来たときのような上ずった声で「上尾ヒロトです」と告げる。
耳元にいつまでもその名前が残った。


他の話が身に入らないままにバスを降りた。見学場である資料館に向かう時、彼が窺うようにやってきたので、私も立ち止まる。
ヒロトくんの事が目に入ったのか、友人たちはニヤニヤしながら先に行った。

「大学生だったんですね・・」

そういえば、私は自分のことを何も話してなかった。
特に童顔なわけでもないから、社会人として正式に働いていると思ったんだろうな。
もう後輩だとわかった手前「うん」と頷いて笑えば、ヒロトくんはハッと息を飲む仕草をした。