くそっ…。
なんで今更、想世架の葬式のことなんか思い出してんだよ……。

想世架の死は、乗り越えたつもりではいるけど…思い出すとやっぱりキツい。

本気で愛してたからこそ、心の風穴は大きいんだよ。



「冷泉くん。」


「……明智。」



俺が1人で憂鬱な気持ちになりながら、大学の講義室に入ると。

ひらひらと、手を振りながら…明智が近づいてきた。
見たところ、今日はあいつがいないらしい。



「大丈夫…?
ここしばらく、顔色が悪いわ。」


「ん…。」



結局、明智にだって想世架のことは話せなかった。

いつかは…言えたらいいんだけど。
同じ医学部で、ゼミも一緒の俺たちは必然的に一緒にいる時間が多い。

…友達、だから。
隠し事をしてるのは少しだけ、心が痛む。



「七瀬は?」


「妹さんが体調崩したから、病院に連れて行ってから来るみたいよ。」


「そうか…。
あいつも大変だな。」



七瀬の家も、なにかと複雑らしい。
あんまり詳しく聞いたことはないど…どうも、男手は家の中であいつだけらしい。