「どうしたん?久々にかけてきて。」
『いやぁ、あんたも東京来て2年くらい経つやん?20歳にもなったしさぁ、一緒にお酒でもどうかな〜って。』
「んー…悪いけど、まだお酒はええかな。」
『なんでーよー、お姉ちゃんが全部奢ったるから飲もーやー。』
飴を溶かしたような甘ったるい声が鼓膜を揺らす。
『なぁ星鎖〜お姉ちゃんが奢ったるって〜。』
「金の問題やないねんけど…。」
『え〜、久々に星鎖に会いたいんよー。ほんまにお願い〜。』
「………わかった。どこ行けばいいん?」
『やったぁ〜!ドタキャンとかなしやでー?えっとなー、○○駅あるやろ?そこに明日の夜の10時に来て!』
「じゅうっ…!?」
夜の10時に飲みに行くなど未知の領域だ。
しかも初飲み。いくらなんでも無理がある。
「10時って、遅すぎ『あ、ごめん!これから仕事あるから、明日な〜。』えっちょっ。」
耳から離すと画面には”通話終了”の4文字。
姉は情緒のない人間になってしまったのかと驚きが隠せないままだった。