「おいおいマサト〜、仕事もできねー女に甘くしなくていいんだよ。」
「朔真さん!」
ナンバーワンホスト『朔真』の裏の顔。
それはとんでもなく凶悪で、底が見えないほどドス黒い。
「せっかくオーナーが雇ってくれてんだからちゃんと働け。迷惑だけはかけんじゃねーぞ。」
「は、はい。」
「マサトもマサトなんだよ。
お前が優男だってのは俺もよくわかってる。けどな、できねー奴に甘くすんのは別だ。わかったか?」
「すみませんっす!
…ごめんね、星鎖ちゃん。」
マサトさんは小さくそう言って、どこかへ行ってしまった。
せっかくの助け舟だというのに。
「もう入店して3日だぞ?
そんなんで店出れんのかよ。」
「が、頑張ります。」
「……チッ。」
小さく舌打ちをした朔真さんはカツカツと私に近づき、
「んむ…!」
「やっぱ体で教えなきゃわかんないわけ?」
私の頬を片手で掴んで耳元でそう囁く。
見た目の割に低い声。
その声に脳まで支配されるかのようだ。
客なら一発で惚れ込んでしまうだろうが、私にとってはたまったもんじゃない。