な、なんで?どうして?
ドクンドクンと冷や汗が止まらない。
次に部屋のドアノブを回す音がして、鍵がかかっていることで私が中にいると確信したみたいだ。
「翠?いるんでしょ?ちょっと用事があって家に寄ったの。顔ぐらい見せてよ」
「………」
ああ、この展開は予想してなかった。帰ってくると知っていれば外に出ていたのに。
「……だれ?」
隣では緑斗がキョトンとした顔をしていた。
緑斗の顔を見ても全然気持ちが落ち着かない。
会いたくない。話したくない。
だって私は……。
「お母さんから翠のことは色々と聞いてるよ。
みんな心配してるし、翠にお土産も買ってきたからさ」
お母さんは私のことをなんて報告してるんだろう。知りたくないな。むしろ考えただけで気分が重くなる。
ずっと返事をしないままの私にドアの向こう側から小さなため息が聞こえた。
「私、今日は泊まる予定だから。気が向いたら話そうよ。ね?」
「………」
その声の余韻が消えるころ、再びタッタと階段を下りていく音。
わずかに指先が震えてる。
私はいつからこんなに弱くなってしまったんだろう。



