「昔はそんなこと考えなかったのに、なんで成長していくたびに生きづらくなっちゃうのかな……」
ぽつりと、弱音が魚の動きに合わせて溶ける。
「この水槽にいるたくさんの魚たちみたいに私はすごく窮屈。ひとりだけの世界だったらどんなにラクだろうって思うよ」
こんな話をするはずじゃなかったのに、あまりに静かで、あまりに一面青い景色が広がってるから、つい弱くなってしまった。
すると、水槽にかざしている私の右手。背後から伸びてきた緑斗の手がゆっくりとそれに重なる。
大きな手はまるで私を包み込むように。
「でも、この大きな水槽に魚が一匹だけしかいなかったら泳いでる魚はどう思うのかな。寂しいって思うのか、それとも優雅で自由だって思うのか」
「………」
「もしそれが後者ならその魚は誰かといる喜びを知らないんだと思う」
水槽に反射して瞳から涙が溢れる。
それに緑斗が気づかなければいいのに。
涙を拭いたいのに緑斗の手が重なってるから離れない。
感覚なんてないのに、きみは透明なのに離れない。
「翠ちゃんは誰かといる喜びを知ってる。だからひとりでは生きられないよ」
私がもがき続ける理由を緑斗が言ってくれた気がした。



