私ひとりじゃしなかったこと。行動に移さなかったことが緑斗のおかげでできてる。
この水族館だって部屋に引きこもったままだったら絶対に来れなかった。
「翠ちゃん綺麗だね」
「え……?」
「水槽の色とそこに映ってる翠ちゃんの姿がすごく綺麗」
そんなことを恥ずかしげもなく言う緑斗の瞳のほうがずっと綺麗な色をしてるけど、水槽に緑斗の姿は映らない。
カラフルな魚と一緒に重なってるのは私ひとりだけ。
それが少し寂しくて、近くにいるのに遠く感じてしまう。
「……ねえ、緑斗はどうして幽霊になったのかな」
そんなこと聞いてはいけないと分かっていながら、水槽の青さに背中を押されて溢れ落ちる。
「うーん。それは俺も一番知りたいことなんだけどさ」
「本当になにも思い出せないの?」
「うん」
「最近の出来事も?古い記憶も?」
「うん」
「……そっか」
もしかしたらそれが緑斗を留まらせている理由なのかな。そんな憶測を並べても答えは出ないけど。
「じゃあ、翠ちゃんの話を聞かせてよ」
「え……?」
気づけば緑斗との距離が近くなっていた。普通だったら肩が触れ合ってるレベル。
「なんでもいいよ。翠ちゃんのこと、たくさん知りたい」
その顔はズルいな……。
私だって緑斗のことを知りたいのに。



