はじめて知った世界の色は



バイトを始めるには少し遅い年齢ではあるけど、働いた経験もないまま高校を卒業するのが急に怖くなった。

それで求人情報を探していた時に短期アルバイトでこの水族館が募集していることを知って私はすぐに電話をした。

経験のない私ができるのは館内の掃除とショーの開催時間を知らせるアナウンスと小さな熱帯魚のエサやりぐらい。


「ねえ、茅野さん見て」

私の教育係りになってくれている職場の先輩が声をかけてくれた。

まだ水族館は営業前で館内に人はいない。それでもこうして水族館の制服を着ていると気持ちが引き締まる。


「なんですか?」

私は魚ごとに種類の違うエサを容器に入れながら先輩の手に注目する。それはマリンパークのチラシ。

この夏にゴマフアザラシの赤ちゃんが生まれて、それの宣伝もかねて今週から地域の人たちに配るとか言ってたっけ。


「実はここに茅野さんが写ってるの」

「ええ!?」

慌てて確認するとたしかにゴマフアザラシの頭を撫でている私が写ってる。

〈人懐っこい性格で、こうして触れ合えることもできます〉と宣伝もばっちり……。


「これって先週に少しだけ触らせてもらったやつですよね?」

「うん。広報の人がこっそり撮ってたみたいよ」

うわ、全然気づかなかった。