「大丈夫。絶対にみちるさんは緑斗のことを待ってるよ。……だから行って!ちゃんと後悔しないように気持ちを伝えて!」
私は緑斗のことを応援する。
だって私に笑顔をくれたのは緑斗だもん。
私は大切な人の幸せを願える人になりたいから。それが今の私にできる最大のきみへの恩返し。
緑斗の顔つきが変わった。とても強い風が私たちの身体を吹き抜ける。
「ありがとう、翠ちゃん」
その顔に迷いはなくて、気持ちがいいほど清々しい表情をしてた。
「俺、ちゃんと自分の気持ちと向き合ってケジメをつけてくる」
「うん」
緑斗の右手が私に伸びて、その優しい指先が頬に重なる寸前で止まる。
きみの体温も私の体温もまだお互いに知らなくて、今触れあえば心で感じることができる気がした。
それでも緑斗は躊躇して、私もそれを引き止めることはしなくて。
「翠ちゃん。またね」
そう言って緑斗は私から離れて、河川敷の歩道の向こうに消えていく。
ああ、緑斗は嘘つきだね。
〝また〟なんてないくせに。
どこまでもどこまでも優しくてズルい人。
緑斗の背中を見送ったこの日のことを私は後悔する日がくるだろうか。
ううん、来るはずない。
だってきみの背中は最高にカッコよかった。
ばいばい、緑斗。
こうして私たちの関係は夕日が沈みゆくと同時に終わった。



