私たちの関係は今日も変わらないけど、それでも緑斗の心はここにはない気がした。
友達でも親友でも家族でもなかったけど、そんな目に見えないことだけははっきりと分かる。
「ねえ、なんで私に緑斗の姿が見えたんだろうね」
気づけばそんなことを言っていた。
あの夜に緑斗が見えてなかったら私はどうなっていたのかな。あのまま本当にラクになれる場所へと向かっていたかもしれない。
そのぐらい私はギリギリだったから。
「人間は必要なときに必要な人に出逢えるようになってるらしいよ」
「え……?」
「その出逢いに気づけない人もいるけどね」
緑斗は柔らかい顔でそう言った。
「……それなら私たちが出逢えたのは私に緑斗が必要だったからなのかな」
そう考えれば難しい問題じゃない。
最初は取っ付きにくくて緑斗の存在に困ってた私だけど、すぐに生活の一部になって緑斗は私の心に溶け込んだ。
それは他の人なら不可能だったと思う。
「じゃなくて、逆」
「ん?」
「俺に翠ちゃんが必要だったんだよ」
緑斗が眉を下げる代わりに私の胸がきゅっとなる。
いつもふざけてるくせにこんな時だけ真剣で。そんなことを泣きそうな顔で言って私にどうしろって言うの?
こんなとき、抱きしめられたらよかったね。
そしたら私はその瞬間を永遠に切り取って宝物にしたはず。
きみの体温が恋しいなんて、言えるはずないけど。



