緑斗の過去を知って、ひとつだけ分かったこと。
それは緑斗も同じようにどうにもならない想いを抱えて、自分の世界だけで生きようと思っていた人だったこと。
10歳の頃から片想いをして7年。
その苦しみや葛藤は私には分からないけど、大切な人と永遠に重なることのない苦い気持ちなら少なからず分かる気がした。
今の私にできることはなんだろう。
それを昨日からずっと考えている。
「あ、翠ちゃん」
ガラッと理科室の扉を開けると、そこには日向ぼっこしている緑斗がいた。
空き教室になっていたこの場所はまるで切り取られた空間のように文化祭前となにも変わらない。
「まだ片づけ中でしょ?」
「疲れたからサボりにきた」
「あはは、悪い子だなあ」
緑斗は隣に座りなよ、という意味で「ここ」と指をさす。私は言われるがままそこに体育座りをした。
緑斗とこんな風に近い距離で座ってもなんの躊躇いもないこと。長時間無言でも耐えられるし寝顔だって見せれる。
まるでそれは家族みたいだったけど、家族だったら胸が高鳴ったりはしないのだろう。
そう考えると緑斗が片想いし続けていた気持ちが理解できるような気がして、少し切なくなった。



