「それで自分が分からずに途方に暮れてる中で俺は翠ちゃんに出逢ったんだよ」
ひとつひとつの欠片を集めながら、ようやくあの夜の出来事と繋がったような気がした。
緑斗が打ち明けてくれた過去を受け止めながら、私が発した言葉は慰めでも同情でもなかった。
ただ、どうしても確かめたかった。
「緑斗は今も先生……ううん、みちるさんのことが好き?」
すると緑斗は否定も肯定もせずに、また目線を落として落ち着いた口調で話し始めた。
「……あの時の俺はさ、自分のことを正当化していて姉さんに気持ちを伝えたら困らせることぐらい分かってたんだ。だから絶縁されるとか引かれるとかそんなマイナスなことは承知の上で、困って慌てて結婚をやめてくれたらいいなって思ってた俺は最低だと思うよ」
私にはそれがさっきの質問の答えのような気がした。
それぐらい、そう思っちゃうぐらい緑斗の恋は本気だったってこと。
「だから俺は事故に遭ってよかったんだ。じゃなきゃ、姉さんの幸せを奪うところだった」
あんなに大好きだった緑斗の笑顔が今は好きじゃない。見てるこっちが痛々しいほど、緑斗の気持ちはなにひとつ消化されていないのだ。



