「つーか、鶴田と仲良くなれなんて何だよ急に。朱里が好きなヤツいるなんて初耳なんだけど」


 つまらなそうに、机の上に置いてあったスマホをイジり始めてしまった祐樹。


 ……祐樹が知らないのも当然だ。私は『鶴橋くんを好き』という事は誰にも言ってない。


 今初めて誰かに打ち明けた。
 だからこそ、祐樹には応援してほしいと思っていたのに……



「あのさ、鶴田って――『鶴田じゃなくて、鶴橋くん!! お願い! 早くしないと鶴橋くん彼女できちゃうよー!』



 私が土下座しているのに、見てみぬ振りをするので『今しかチャンスがないの!!』と必死に両手を合わせて頼んでみる。



「朱里の恋愛事情とかムリ。マジでムリ。本気でムリ。協力なんて本気でしないから」


 ”本気でムリ”この言葉を強く吐き捨てては、『これ以上、その話すんな』と、机の上のおせんべいをボリボリと食べ始めてしまった。



 まるで私の声をかき消すように、それはもうバリバリボリボリと。



 祐樹しか頼れる人がいないのに…………


 私の気持ちを、ちっとも分かろうとしない祐樹に腹が立ち、『もういい!!』と、怒り任せに祐樹の家を後にした。