『大丈夫』


 そう思っていたけど、実際はそんなに甘くはなかった。


 鶴橋くんは『殴らない』と約束したにも関わらず、何かイヤな事があるとすぐ手をあげるようになった。


 一回殴ってしまえば、手を出しやすいのかもしれない。


 それでも顔の腫れを気にしてくれているのか、数回平手打ちされるだけで、殴る事はされなかった。



 数回私の頬を叩くと、ハッとしたように我に返り『ゴメン』と謝る鶴橋くん。


 特に言い返す事はせず、されるがままだった。


『朱里が悪いんだよ。俺をイライラさせるから』


 ――この言葉も、もう聞き慣れた。


 それでも叩かれるのはやっぱりツラくて、『あと少しの我慢』そう必死に言い聞かせ、耐えていくしかなかった。