何処かの豪邸。
青年は疲労困憊した顔で、執務室の椅子に腰掛けて資料を確認していた。傘下の中小企業の現状の調査だ。
紙の資料を見終わった彼は、続いて写真へと手を伸ばす。そしてひら、ひらと次々それを見ていった。
「………おや」
その手が、ある一枚の写真で止まった。
「……君だったのか」
彼が持っている写真には、汗を流しながら大きな木材を運ぶ草野ゆきの姿があった。
「……これは、探す手間が省けたというやつだね」
彼は急いで写真の中小企業の社名を確認する。
「君の……名前も、知りたいなあ」
その時はただ、初めて自分を止めようとした彼女に興味がある……それだけだったのだ。
本当に、それだけだった。

