カゴノトリ

「ゆきちゃん、おはようさん!」

「おはようございます!」

大声で挨拶しつつ、仕事場へ入る。ここは肉体労働の場、挨拶は基本なのだ。

直射日光の中、重いリュックを薄汚れた机の上に下ろす。ギシッと机が軋んだ。

「そうだ、今日頭領は一緒じゃないのかい?」

「頭領ですか?あぁ…夏風邪を拗らせているみたいで。お休みです」

「そうかぁ、そいつぁ残念だ……今日はお偉いさんの部下がこの現場を視察しに来るんだがなあ…」

そうボヤきながら労働者のひとりは機材を運ぶ。

「へー、そうなんですか。ちなみにそのお偉いさんとは?」

「ゆきちゃん、聞いて驚くなよ!日本のあらゆる企業を纏めあげるリーダー、更に海外にも強大な干渉を与える事が出来る大企業の代表、トップだ!」

「ほー……なんでまたそんな人の部下がこんな小汚い工事現場を」

「小汚い言うな馬鹿ぁ!……あー、その、だな。うちは中小企業だろ?今度お偉いさんとその部下の間でな、この辺り一帯にある中小企業を全部視察しようっていう話になったらしくてな。視察を受け入れてくれたら多額の報酬金を出してくれるってもんだから……頭領含めゆきちゃんのいない隙に受け入れを決めちまって…な」

「私は別に気にしませんけどね…でもそこまでこそこそしなくても」

「悪い悪い!」

えっちらおっちら働きつつ、そんな無駄話をしていると。




「すみません、こちらが本日の視察先で宜しいでしょうか」

工事現場の入り口の方から、大人数のざわめく声と、そんな声が聞こえた。