キミと初恋。

「いやー、予定はないっちゃないんですけど……」

「なんだよ、どっちだよ」


どーしよう。うーん、うーん……。


「あっ、私園芸部だからお花に水あげしなきゃだし」

「いや、それは十分だろ」


先輩はそう言ってつん、と向かいの花壇を指さした。

……そうですね。雨ですもんね。

花壇に水あげどころか、雨でびしょ濡れだ。


「お前、本当に俺の事嫌うよな」


言いながら先輩は笑った。どことなくちょっと嬉しそうにも見えるのは、安心とかそういった類の気持ちからなのか。


「そんな……嫌ってなんてないですよ」


嘘つけ、なんて言い返されるけど、私も笑顔を振りまくのが精一杯だ。どことなくぎこちなさは感じるけど、きっと上手く笑えてるだろう。


「なんか、姪っ子を相手してる気になってきたわ」


姪っ子?


「先輩姪っ子がいるんですか?」

「おう、10歳も年上の姉貴がいるんだよ。結婚して家も出てってるけど、その姉貴の子供もいつもそーやって俺の事避けるんだよなー。かと思ったらいつも隣にやって来るし」


その姪っ子ちゃん、羨ましいな。いつでも先輩に可愛がってもらえるなんて。


「その子はきっと、先輩の事が好きなんですよ。ある種のイヤイヤ期ってやつじゃないですか? もしくは人見知り的な照れとか……」

「どーだか」


なんて言いながら、先輩は優しい顔で遠くを見つめた。

私のよく知る先輩の笑顔で……。