「ねぇ、かすみ」


りょうちんに呼ばれて、私は慌てて券売機の方へ視線を戻す。けど、りょうちんはまだ食券とにらめっこして、私の方は向いていない。


「んー? あ、りょうちん何買うの?」

「カレーうどん」

「いいね、私もそれにしよっかなー」

「真似するなよ」

「いーでしょ、私もカレーうどんの口なんだから」


私はふてくされつつ、りょうちんが食券を受け取ったのを確認してから券売機にお金を入れた。


「ねぇ、かすみ」

「なによ、もうカレーうどんの券買っちゃったんだからね。真似するなって言われても無理だからね」


ってか私だって食べたいんだから、真似もなにもない。そう思って食券を握り締めて顔を上げると、りょうちんはもう私の方を向いていなかった。


「先輩の事、本気じゃないんだったらイケメンと付き合ってみるのはありだと思う。たった一日だったとしてもあんなイケメンと付き合える機会なんて滅多にないじゃん?」

「だーかーらー、そもそもそんな気持ちすらないってば」


まだ言うか……そう思いつつ、私が口を尖らせて言い返してみるけど、りょうちんは食堂のおばちゃんがいる注文口に向かいながらぼそりと言った。


「でもさ、もし本気なんだったらやめときなよ。かすみが傷つくだけなんだからね」

「だーかーらー」


私が言い返そうとしたけど、りょうちんは聞く気なんてさらさらないのか、「お願いしまーす!」なんて元気よく、食券を食堂のおばちゃんに渡した。