キミと初恋。

気がつけば、私を苦しめていた頭痛は治まっていた。


「あっ、チャイム。3時間目終わりましたね」


「だな」なんて言いながら先輩はかったるそうな体を天に向かって伸ばした。


「じゃ俺は教室戻るわ」

「あっ、私も戻ります。もう頭痛治ったので」


そうやってベッドから這い出ようとしたら、先輩に押し戻された。


「かすみ、お前はもうちょい寝とけ」

「いや、でも、頭痛はもう……」

「ばーか。せっかくサボれる口実あるんだろ? そんな時はゆっくりサボってりゃいいんだよ」


そう言って、先輩はとろけるような優しい顔で微笑んだ。無防備な私の頭を撫でながら。


「4時間目終わったらまた食堂でな。あっ、そこはサボんなよ」

「ちゃんと行きますよ」


私はふてくされたみたいに、シーツを頭から被って返事を戻した。


「ははっ、ならいいけど」


ガラガラ、と保健室の扉が開いて先生が帰ってきた。それと入れ違う形で、先輩は出て行った。


「……斉藤さん、どう? 頭痛は良くなった?」

「いえ……また始まったみたいです」

「あら、顔が赤いわね。熱でも出てきたのかしら。体温計、体温計……」


先生は隣の部屋に体温計を取りに行った。

でも先生、熱は無いんです。これは違うんです。


かすみーー先輩が何気無く呼んでくれる私の名前。

何気無く触れられる私の頭。

先輩のあんな優しい笑顔を向けられながらそんなことされたら、誰だってこうなると思う。

大丈夫、私は大丈夫。

ドキドキと高鳴る心臓、熱を帯びた頬。

大丈夫、まだ私は大丈夫ーー。