キミと初恋。

先輩がそうやって笑ってくれるのなら、私は道化にだって何にだってなれる気がする。


元の、私の知ってる先輩に戻るには時間が必要だ。

もしくは、新しい彼女。ただそれは、日替わりなんてものじゃない本当に好きな人。

先輩は私のヒーロー。

だけど、知らない間に先輩はみんなのヒーローになっていた。

ヒーローの隣には可愛いヒロインがつきものなのに、先輩の隣にそれはいない。

ヒロインの席はまだ空席のままだ。

私はヒロインになんてなれないから、だから先輩が元気になれる居場所を提供できる人間になりたい。


先輩は正直、私が出会った頃よりもずっと背が伸びて、ずっと声も低くなって、ずっと、ずっと……かっこよくなった。

綺麗な花には蝶や蜂、沢山の虫たちが寄って来るように、先輩もカッコよくなってから周りが騒がしくなってしまったに違いない。

恋による傷が思ったよりも深くて、身動き取れなくて、でも周りは放っておいてはくれない。

ただ蜜を吸われるように、勝手に羽根休めされてしまうように、彼女達のなされるがまま、言われるがままになって、こうなってしまった。

私は先輩の高校生活をたった数ヶ月しか見ていない。だけど、私が知り合った中学生だった頃の先輩は、今みたいな顔で笑う優しい人だった。

だから先輩、私は先輩の友達役を頑張りますね。例え風よけ役だとしても、頑張ります。

なんだかんだと文句言ってすぐ挫けそうになるくせに、先輩のそんな笑顔を見るたびに私は心に誓いを立てていく。

すぐに心折れそうになる誓いだけど、先輩が笑顔を見せてくれるたびに立てていきます。

だから先輩、どうか笑って。たくさん笑ってーー。