キミと初恋。

『丁重にお断りさせていただきます』


ぺこりと腰を90度に折り曲げた。

頭を上げるタイミングでそのままこの場から逃げ出そうと思ったけど、先輩は私の行動をお見通しだとでも言いたげに、私の腕を掴んだ。


さっきはそれどころじゃなかったからなんとも思わなかったけど、先輩の大きな手で軽々と掴まれる私の腕に全神経が集中してしまい、逃げるなんて考えはどこかへ消え去ってしまった。


『そう言わず、ひとまずお試しっていうのはどうだ?』


一瞬、それなら……なんて、何も考えずに返事をしそうになり、そんな思考を追い払うかのように頭を何度も振った。


『い、いやいや、お試しとか無理ですから!』

『なんだ、真面目かよ』

『先輩が不真面目すぎるんですよ!』


というか、そういう問題じゃない。お試しなんかで付き合うなんて、意味がない。

今まで食堂で先輩の隣に座ってたのは、先輩の彼女。日替わりランチ並に短期間とはきえ、彼女達はちゃんと付き合って、曲がりなりにも“彼女”だった。

状況的には同じようなものなのに、彼女でもない私が、先輩の隣にいるなんて、危険過ぎる。

きっと私は殺される。

そんなの嫌だ。彼女でもないのに殺される覚悟なんてあるわけない。


だけど先輩の気持ちとしては同じなんだと思う。付き合ってる人が隣にいようと、お試しでという私が隣にいようと、それは先輩にとってどっちでもいい事なんだろうな。

今まではきっと、告白されたからとりあえず付き合ってた、ただそれだけ。

そこには気持ちどころか、何もない。だから先輩は次に別の子に告白されればそっちと付き合う……そんな馬鹿げた事を繰り返していたんだと思う。