キミと初恋。





現実は、残酷だ。


私が先輩を殴ったのは、昨日のこと。

あの事件の事が学校中に広がるのは針に糸を通すよりも容易い。

自分で言うのもなんだけど、そもそも青井先輩を殴る女子なんてそういないと思う。

というかいないだろう。


「かすみってさ、見た目は大人しそうに見えるのに、案外中身激しいよね」

「りょうちーん……」


私は机にへばりつきながら、りょうちんに甘えるような声色で助けを求めた。


助けというか、救いというか……。

昨日からずっと周りの視線が痛くて、なれるものなら私はもう、教室のほこりにでもなりたいくらいだ。


「ってかりょうちん酷くない? なんで昨日あそこで私を置いてくかなぁ?」

「あたしは自分の身を守ったまでだし」

「友を捨ててもか! 酷いな!」

「今のご時世、自分の身くらい自分で守らないでどーする。って、かすみは守ったのか。先輩殴ったのは正当防衛ってやつ?」

「……もうそれは忘れて」


傷に塩をぐりぐり擦り付けてくるりょうちん。先輩の事散々最低だとなんだの言ってたけど、りょうちんもなかなかじゃないか。


みんなが虜になる青井先輩にりょうちんはひっかからない。

それはきっと、こんな性格のりょうちんだからこそ、彼女は青井先輩に惹かれたりしないのかもしれない。

どことなく似た性格してるから……? なんて思ったりもしたけど、りょうちんはしっかり者だからちゃーんと他校に彼氏いるからなんだろうな。


そんな事はどーでもいいとして、問題は先輩を殴ってしまったという事。
今回のは正当防衛というか、先輩の言葉にイラっとしてしまったってだけなんだけど……。

付き合った人達の顔も覚えてないのか。曲がりなりにもあなたの彼女だった人達でしょうが。

そう思うとなんだか悲しみにも似た苛立ちがこう、もくもくとね……。