“バイト先のヤツから遊園地のチケット貰ったから、暇なら行くか?”



遊園地……。

行く! 行きたい!!


私は再びがばっと起き上がって、ケータイを両手で握り締めた。

その行動に頭がくらりと揺れるけど、一瞬だけ両瞼を堅く閉じ、そのままぐいっと瞼を押し上げた。

すると、ほんの少しだけ、目眩が和らいだ気がして、その勢いのまま私はケータイに文字を打ち込んでいく。


“行きます!”


楽しみにしてる。とか、可愛らしい絵文字をのせるとか考えたけど、やめた。無駄な事で労力削るよりも今は体力回復に務めるべきだと思って、ケータイを握り締めたまま、ゴロンとベットに横になる。


すると、颯ちゃんから早速返事が返ってきた。


“了解。明日9時に××駅の南改札口で”


颯ちゃんも味気ない返事を返して来たけど、私にはそのメッセージ画面がキラキラと輝いているように見えた。

颯ちゃんとデート。嬉しくって眠れそうにない。


あれは夢じゃなかったんだ。私は颯ちゃんと、ちゃんと付き合ってるんだ。

さっきまで不安というか、やさぐれそうになっていた私の気持ちは一気に巻き返し、熱があるというのに体はふわりと空気のように軽くなった気がした。

そうと決まれば、さっさと体調を整えなくちゃ。なにせ遊園地だ、体力いるに決まってる。


……だけど、幸せな気持ちと共に私の頭の片隅にそろりと現れるーー不安。

不安というか、罪悪感。



私はまだ、お姉ちゃんに颯ちゃんとの事を伝えていない。

お姉ちゃんは、私と颯ちゃんが付き合っている事を知らない。それに、私が颯ちゃんの事を好きだった事すら知らない。


いつか言わなくちゃ。そう思って、思い続けてあっという間に数日が経過していた。