「だからーー俺と付き合って下さい」




私は思わず力が抜けた。そしたら、そのまま地面にへたり込んでしまった。


「おい、大丈夫か」


慌てて颯ちゃんが私の腕を掴み、立ち上がらせようとするけど、私の足はタコの様に骨がないみたい。全然力が入らない。


「……な、んで?」

「なんでって……なにがだよ」


颯ちゃんの凛々しい眉がくにゃりと歪んだ。


「どう考えても、私は先輩の好みじゃないと思うんですけど」


これは心の声だった。でも言葉は口を突いて出てたみたい。


「はっ、そんなもん、勝手に決めんなよ」


いや、笑ってますけど……冗談じゃないですからね。私とお姉ちゃん、月とスッポンくらい違いますからね。


「私以外にももっといるでしょ……なんで私なんですか……?」

「はぁー? 相変わらず変な事言うヤツだな。そんなもん、俺が決める事だろ」

「だっ、だって……」

「かすみ!」


颯ちゃんは、私の両腕をぎゅっと掴んで私から視線を逸らさず、言った。


「俺はかすみがいいんだよ」


……そんな事って、ありますか? そんなミラクル、ありえますか?


私は思わず自分で自分の頬を思いっきりつねった。


「いてて……でも、夢じゃない」

「夢なもんか、バーカ」


そう言って、颯ちゃんが私の頭をくしゃりと撫でた。

あ、それヤバい……そう思った時には手遅れだった。


「……泣くなよ」


私の涙を止めていた留め金は、外れてしまった。


「……先輩のせいですからね」


私は再びかすみ草の花束で顔を隠すはめになった。


「俺、まだ時間必要なんだと思うんだ。だけど、ちゃんとするから……気持ち整理するから、だから……」


言いながら私の頭をよしよしってする颯ちゃん。だからそれ、ずるいですってば。私は反対できなくなるじゃないですか。