「隙アリ!」

「あっ! ちょっ、またぁ!?」


りょうちんは私の最後のコロッケパンのコロッケまで盗み食べた。


「まだまだ修行が足りないね」

「意地汚いなぁ!」


しししっ、ってりょうちんは笑いながらごくりとコロッケを食べ切った。


「でもさ、かすみはいいの?」


私は半分空っぽになったメイン不在のコロッケパンの空白を覗き込みながら、悲しさと苛立ちの返事をぶっきらぼうに投げ返した。


「なにが!」

「先輩、明日で最後じゃん。このままお別れでいいのかって事」

「いいよ。もう私に出来る事も、する事もないから」


私は、空洞のできたコロッケパンを頬張った。

前に颯ちゃんとコロッケパン食べた時はまだ夏が名残る季節だったのにな。もうずっと昔の事のように感じる。


「ふーん、ならいいけど」

「うん」


りょうちんにも言ってないけど、私の気持ちはもう伝えた。全て言った。言いきった。だからもう十分なんだ。


私は教室から見える窓の外の景色を見て、明日晴れるといいなって思った。

空には厚い雲が覆われていて、今にも雪でも降りそうな景色だ。

明日くらい、スカッと晴れてくれたら……そう思って再びコロッケパンを頬張った。