『お前は全部知ってたのかよ』


……うん、知ってた。もちろん、颯ちゃんはお姉ちゃんの元カレだって知ってたよ。

颯ちゃんがこの高校を受験したのを知って、私はここに通おうって決めたんだもん。


『全部知ってたんだろ。その上で俺のに近づいたのかよ』


私はきっと、颯ちゃんと言葉を交わす事さえないと思ってた。同じ学校で颯ちゃんと過ごす1年間、私はただ颯ちゃんを遠くから見つめるだけで終わるんだと、本当にそう思ってた。


『楽しかったか? お前の姉にフラれたあとの俺の様子見てて。こんな彼女取っ替え引っ替えしてるやつが風花と付き合ってたって知ってどう思った? 嘲笑ってたのか? それとも仕返しでもしてやるつもりだったのか?』


そんな風に思った事なんて一度もない。

私はただ、颯ちゃんにもう一度、昔のあの笑顔を取り戻して欲しかっただけーー。


……私は、頬を伝う暖かな涙をシャツの袖で拭った。


『ーーどういう気持ちで俺を見てたんだ?』



そんなの、決まってる。


私はーー。