キミと初恋。

ーー放課後。


私は先輩との約束を守るために、あの花壇のある裏庭へと向かった。

きっと今の私は、あの花たちを見ても心癒される事はないかもしれない。


“颯ちゃんって言った時、アイツマジでぶちギレててーー”


颯ちゃんがキレた理由はなんとなくわかる。私だって颯ちゃんって呼ぶのは勇気がいったんだ。

その理由は、お姉ちゃんだった。


“ーー颯ちゃんがね……”


そう言って笑うお姉ちゃんの笑顔が、私の心に罪悪感を与える。

きっと颯ちゃんは、“颯ちゃん”と呼ばれると、お姉ちゃんの事を思い出してしまうんじゃないかって、そう思った。だからつい呼んでしまった時、あれは事故だけど、それでも颯ちゃんに怒られる覚悟をしていた。

なのに、颯ちゃんはなんて事ない様子で、下級生の私が馴れ馴れしくもそう呼ぶのをすんなりと受け入れてくれた。

それがとても嬉しかった。


ーー颯ちゃん。


あの呼び名に憧れていたけど、そう呼んでいいのは、多分、ヒロインだけなんだと思ってたから。

そう、日替わりなんかのまがい物ではなく、正真正銘のヒロインだけーー。


きっと元カノの先輩が呼んだ時、まだ颯ちゃんはお姉ちゃんに未練があった。ううん、それは今だってあるはずだ。だけど、その未練が少しだけでも緩和されたのかもしれない……。

私と関わるようになってから。

私のおかげだなんて、そんなおこがましい事を思ってるんじゃなく、単に気が紛れるそんな存在にはなれたのかもしれないな……なんて、そう思って。


そんな風に思わないと、先輩が言ってた事と辻褄が合わないから。

そして、誤って勘違いしてしまいそうになるから。


不毛な勘違い。それだけはしてはいけない。じゃないと、最後に傷つくのは目に見えてる。