キミと初恋。

「あっ……」


思わず声が漏れ出てしまった。

トイレに入った所で、鏡の前に立ち前髪を入念に整えている人物。その人物がここにいるのが意外過ぎて、思わず出た声だった。


「ああー、アンタか」


鏡越しにちらりと横目でこっちを見やる、颯ちゃんの元カノで、私に水を引っ掛けた先輩。

あの時の事を思い出して、思わず身を固め、体が勝手に警戒し始める。


でも、なんでこんな一年の校舎に? わざわざ一年の女子トイレを使用しに来たのだろうか?


「部活の後輩に用があって会いにきただけだから」


えっ、なんで? 私の思った事が分かったんだろう。

なんて思ってトイレの個室に入ろうと手を伸ばした瞬間だった。思わず先輩の背中にマジマジとした視線を送ってしまった。

そしたら先輩は、鏡越しに私と目を合わせた。


「ははっ、なんで分かったのって言いたげな顔してんね。言っとくけど、全部表情に出てたからね」


前髪は上手くまとまったのか、よしっという掛け声とともに、先輩は鏡から顔を背けて、私と向き合った。


「しっかしアンタ、嫌がらせ受けてんだって? ははっ、ざまーないね」


吐き捨てるみたいにそう言う先輩。私は再び身構えた。

けど……。


「ここで会ったついでに言っとくけど、それあたしじゃないからね。青井にも言われたけどさ、あたしそんな姑息な手使わないし。やるなら真っ向からやる性分なんでね」

「颯ちゃ……青井先輩に何か言われたんですか?」


私は先輩が言う颯ちゃんとのやり取りが気になって思わず気を緩めてしまった。

言い直したけど、それはもう先輩の耳に入った後だった。