「ふざけんなっ！」


パコンッという音と共に、怒り狂った先輩の元彼女は、少し距離を置きつつ好奇の目で行く末を見守っていた聴衆の人混みをかき分けて、食堂から出て行った。

元彼女が最後に投げたプラスチックのコップが青井先輩の胸元に当たり、それはそのまま床に転がっている。

カラカラカラ……なんて虚しくも乾いた音だけが、異様にも感じるこの空気を切り裂いた。


「……せ、先輩。大丈夫ですか……？」


あっ、やっと隣に座っている現彼女が口を開いた。

よくよく見てみると、現彼女は私と同じ1年だ。
昨日付き合ってたという元彼女のリボンの色が紺色だったから、彼女は青井先輩と同じ3年生。

なるほど、どうりで口を挟まなかったわけだ。まぁ確かに、あの勢いだったら、先輩後輩なんて関係なくても怖くて口挟めないよね。


「ああ、大丈夫」


彼女は心配そうにポケットからハンカチを取り出し、青井先輩の濡れた髪を拭こうと手を伸ばしたけど、先輩は首を曲げてそれを拒否した。

先輩が立ち上がったのを見て、私はとりょうちんは慌てて前へ向き直った。

現彼女を置いたまま、その場を去ろうとする青井先輩へ道を開けるように、聴衆も散り散りになり、時が止まったように静かだった食堂内は騒がしさを取り戻し始めていた。