キミと初恋。

「なぁ、斉藤。なにも先生はお前を吊るしあげようとしてるわけでもないんだぞ」

「いえ、それは分かってますよ」

「今日、食堂近くにお前の教科書捨てられてたって先生は聞いたんだが、それはデマなのか?」


その事をもう知ってるんだ……。私ですらついさっき知ったというのに。

あれを見つけた人たちが、それだけ騒いでいたに違いない。なにせ場所は食堂近くで人も多く、さらに私には先輩との事でこんな事が起きてもおかしくない状況でもあるのだ。

嘘をついたところで意味がないし、良い言い訳も見つからない。だからここは素直に答えることにした。


「デマ……では、ないですけど……」

「しかも先週は花壇荒らしもあったんだろ? 今回のこと考えたらあれも斉藤絡みではないのか?」


私は口を開いて、そのままなにも言わず、再び口を閉じた。言い返す言葉が見つからなかった。


「……斉藤、悩みあるなら先生聞くぞ? 俺に言いにくいような話なら他の先生でもいいが……」


ポリポリと頭をかいて、先生は意味もなく机の上に出しっ放しのペンを綺麗に机の隅に並べ始めた。

きっとこれはただの手持ち無沙汰なのだと思う。なにせ先生は体育教師で、典型的と言っても良いほどの体育会系……要は細かい性格の先生ではない事はみんながよく知ってる。


「教科書の事はまぁ、困りますけど、でもそれだけですから大丈夫です」

「それだけって……教科書無かったらまた買わなきゃならんし、それまでは授業にも差し支えが出るだろう。そもそもあれは親御さんが買ってくれた教科書だろう?」

「そうですけど……」


だからと言ってどうしたらいいのかもわからない。だって犯人すら分からないし、犯人の心当たりは多すぎるし。