キミと初恋。

「失礼します」


小さく会釈をしたあと、私は職員室に足を踏み入れた。

授業が始まる前のゆっくりとした休息時間であり、次の授業にとりかかるための準備時間でもある休憩時間。

先生によって態度は違えど、みんな机に座って何かをしている。

そんな中、私は担任がいる席を見やった。職員室の窓際、角の席。そこに私のクラスの担任、花岡先生が何やら険しそうに眉頭にシワを寄せて座っていた。

先生は私がやって来た事に気がつくと、少し下がっていた顔をすっと持ち上げ、眉間に寄せていたシワをほんのり解いた。


「おお、斉藤か」

「先生、何かご用ですか?」


30代か40代くらいの担任の先生は、近くに置いてあった丸椅子を引き寄せ、そこに私が座るよう促した。


「斉藤にちょっと聞きたい事があってな」


体育担当の先生が、改まった様子には違和感しか感じない。

私は先生に促された椅子に座り、両手を膝の上に置いて、向き合った。


「なんですか?」

「……最近、なにか心配事や困った事はないか?」


先生な言いにくそうに私から目をそらしながら、囁くようにそう言った。

他の先生方や私と同じように担任の先生に用事があって来ている他の生徒に聞こえないように小さな声だった。


「えっと……特にないです」


先生が何を聞き出そうとしているのか、何を言いたいのかはもうはっきりと分かってる。けど、私はその答えを言わない。

そしたら先生は目を逸らさずにもう一度聞いてきた。


「本当にないのか?」

「ないです」


キッパリ言い切る私に、先生は肩を落としながら小さく息をこぼした。