キミと初恋。

「……颯ちゃんは小姑みたい」

「おい、誰が小姑だ」


あれ? なんて思った時にはもう遅かったみたい。声に出したつもりはなかったけど、どうやら言葉は口を突いて出てしまった後のようだ。

先輩は私の頭を優しく突いた後、ははっと笑いながら再びパンを食べている。


ーー颯ちゃん。


思わず零したその呼び名。ずっとそう呼んでみたかった。


『颯ちゃんがね……』


お姉ちゃんがそう呼ぶ先輩の名前に、ずっと憧れてた。

だって本当は私だってずっと、ずーっと前から、先輩の事が好きだったんだから。

お姉ちゃんが先輩と出会う前から、あの優しく笑顔を見てから憧れと好意を抱いてた。

颯ちゃんーーその呼び名は先輩らしくていいなぁ、ってずっと思ってた。

今の、この高校で出会った先輩じゃなくて、以前の先輩にとても“らしい”あだ名だと思う。


だからーー。


「……颯ちゃん、明日は唐揚げ食べたいです」

「リクエストは受け付けてねーよ」

「たまにはいいじゃないですか。これは私への報酬でもあるんですから」

「俺が食べたいものを食べる」

「だから先輩は好きなもの食べればいいと思いますけど、私はーー」

「ご飯は同じもの食べる方が美味いだろ?」

「でた、先輩の独裁政権」


颯ちゃんは、颯ちゃんじゃなくて、やっぱりジャイアンって呼び名の方が相応しいのかもしれない。


私がふてくされてパンを頬張ろうとしたら、そんな様子を満足そうに、優しい視線が私の横顔に突き刺さる。

……颯ちゃんは、ズルい。

今、横を向く勇気は私にはないな……。そう思って、どうにか顔が赤らまない様に、懸命にパンに意識を集中させた。