私を含む外野は、先輩がなんて返事をするのか、耳をダンボにして待ってる。

待つ時間は思ったよりも長く感じて、とてももどかしい。実際は数秒の事でも、この状況が私にそう感じさせた。


「説明って言われても、お前とはもう付き合ってるつもりも無いんだけど？」


サっ、サイッテー……。


思わず口から零れそうになったその言葉は、口から飛び出す直前になんとか喉へと押し戻した。

と、同時に、同じように動きはじめたりょうちんの口を今度は両手でしっかりと抑える事にも成功した。


「サイテー！」


金切り声が背後から聞こえたと同時に、勢いよく水が跳ねる音が聞こえた。

けど、実際は水が跳ねたわけじゃないんだと思う。だって私の首筋にも冷たい水が飛んできたから。

私は驚いたフリをして、後ろを振り返ると、予想していた通りの景色がそこにはあった。


振り返った先には髪が濡れた先輩と、その隣でただ震えてるNEW彼女。

机を挟んだ向かいには怒りで顔を真っ赤にしつつ、手には空になった食堂のプラスチックのコップを持った元彼女。

コップには今さっきまで水が入っていたであろう様子が、その滴る水分から物語っていた。


「別れようなんて一言も言われてないんだけど！」

「じゃあ、今言う。俺、あんた無理だわ。バイバイ？」


濡れた髪のせいで先輩の頭はいつもより小さく見える。いや、元々小さいんだと思うけど。

そんな頭を傾げながら冷たい言葉を投げる先輩は、正直良い死に方をしないと思う……。