ーー翌日の朝。
「かすみ宛に手紙が届いてたわよ」
キッチンに立つお母さんは私には目もくれず、ダイニングテーブルの上にぽつんと乗ってる手紙を洗い物してる濡れた指で指した。
手紙……?
テーブルの上には真っ白の封筒。宛名には私の名前がフルネームで書き込まれ、他には何も記載がない。
手紙を持ち上げ、裏面を見てみるけど、送り主の名前もない。
……なんだこれ?
そんな風に思いながら、私はいつもやるように封筒の封の閉じ口の隙間に指を入れ、あたかも自分の指がペーパーナイフであるかのようにして割いていった。
「いたっ!」
そう思った瞬間、指に鋭利な何かが当たり、鋭い痛みを感じたところから赤い血が滲み出てきた。
「ちょっと、どうしたの」
私の指からボタボタと落ちる血を見て、さすがにお母さんは蛇口の水を止め、手をエプロンの裾で拭きながらやって来た。
「カミソリだ……」
赤黒い自分の血が指の上でこんもり乗っかって落ちるその様子をなんとなく冷静に見てたら、お母さんは救急箱からガーゼを取り出し、私のその指に押し当てた。
「なにボーッとしてるの! 止血しなさい」
お母さんからガーゼを受け取り、血のついた手紙を注意深く制服のポケットへとしまった。
「おおちゃくな開け方するからこうなるのよ」
そう言ってお母さんは絆創膏を一枚差し出し、血が止まった後に貼るよう促してきた。
お母さんはきっと手紙を指で開ける時、紙で指を切ったんだと思ってるんだろうな。
そう思ってもらってるならちょうどいい。
床に落ちた自分の血を拭き取り、私はそっと部屋へと戻った。



