「じゃあ、隣に座ってるその子は誰よ!」


ぴしゃりと言い放つ彼女の言葉には、怒りしかなかった。

ことは私達の背後の席で起きてるため、姿は一切見えないけど、ボルテージが上がりきってる様子はその声色を聞けばよく分かる。

誰もが耳をそば立てている中、青井先輩は焦る様子も悪びれる様子も無く、サラリと一言。


「俺の彼女だけど?」


私は思わず、息を飲んだ。


「サイテー」

「りょうちん! しっ!」


りょうちんが突然言い放った言葉に、私は思わず彼女の口を塞ぐ。私の声はもちろんの事、りょうちんの声も決して大きいわけではなかった。

けど、これだけ静まり返った食堂内、その上背後には渦中の方々。聞こえてなかっただろうか……私は静かに耳をそば立てた。


「なにそれ! あたしとその子、二股って事!?」


……どうやら、私達の声は届いていないみたい。

思わずほっと溜め息をつき、りょうちんには口を挟まないようにキッと睨みつけてから、彼女の口を塞いでいた手を離した。


「二股じゃないけど」

「じゃあ、どういう事か説明してよ!」


青井先輩に彼女だと紹介されたハズの女子は、怒り狂ったもう1人の彼女を恐れてか、一切口を開かない。

後ろを振り返れる状態ではないからただの勘だけど、声が一切聞こえない様子からすると間違いではないと思う。