「何でその子がそこに座ってるの?!」


ザワザワと騒がしい食堂内が、一瞬で静まり返った。人でいっぱいなのに、異様なまでに静かだった。

その沈黙を破ったのはヒステリックに叫び声をあげた女子。


「あたし達、昨日付き合いはじめたよね?」


ひゃー、修羅場だ。

傍観者達は渦中の中にいる人達を見ようとして、あたりは寿司詰め状態。

私達一年の校舎は食堂から一番離れているせいで、いつも私達がここに着く頃は上級生達でいっぱいだった。

だから席はいつも空くのを待つか、入り口側の寒くて狭い席くらいしか空いていない。


今日は授業が少し早く終わって良い席を取れたと思った矢先、背後の席に青井先輩がやって来て、私はいつもよりドキドキとしていた。

いつも女子に囲まれてる先輩のそばに来れてラッキー、なんて思っていたのに……。


「付き合ってって言ったらOKしてくれたよね!?」


彼女はこないだ見た人とはもう違う。先輩は週になん人彼女を変えれば気がするのだろう……。

そう思っていた矢先、背後に座る先輩が口を開いた。


「ああ」


あ、先輩の声がいつもより近くで聞こえる。そんな事だけで私の心臓は素直に喜びの音を奏でていた。

こんな状況だというのに……私もなかなかの野次馬だと思う。