きっとまた、怒ってる。




だって一言も喋ってくれないし、振り返ってもくれない。




「あの、」



「悪かった」




学校の脇に停められていた雨宮さんの車に乗り込むと、少しの沈黙の後、声が被さる。




「昨日のは、俺が悪い。少し言い過ぎた」




ハンドルに突っ伏していたかと思えば、いつの間にか顔だけこちらに向けて、まっすぐ私を見つめる瞳。



サングラスもマスクもいつの間に外したのか素顔の雨宮さんに見据えられて、心臓が跳ねる。



「わ、たしも、ごめんなさい…」




やっとの思いで絞り出した声は少し掠れて、恥ずかしくなって俯いた、のに。




「……泣いたか」



「!」




長い腕が伸びてきて、顎を持ち上げられて。



無理矢理顔を上げられ、運転席から身を乗り出した雨宮さんと至近距離で目が合う。




「あ、あまり見ないでくださいっ」




ただでさえ大きくない目が腫れてるせいで半分くらいになってて、とても見せられる顔じゃないのに。




「泣かせるつもりじゃ、なかった」




切なそうな顔をして、それでも目を逸らさない雨宮さんに、まるで心臓が鷲掴みにされたみたいに苦しくなる。