「そんなんじゃないです!相手はきっと、私のことを小学生くらいにしか思ってませんから…!」
どうせ、一回り以上年下のクソガキ。
睦月さんに比べたら、むしろ赤ちゃんレベル。
深い意味なんてきっとない。本当に、ただ小学生の帰りを心配する親みたいな、そんな気持ち。
「まぁ、相手の人がどう思ってるかは知らないけどさ」
「はい」
「彩羽ちゃんはよっぽどその人のことが好きなんだね」
「なっ…!?」
また、その話。
分からないことを、みんなが言う。
「…すきって、どういう感覚ですか?」
「そうだねぇ。例えば、おはようって言いあえただけで1日頑張れそうな気がしたり」
「はい」
「ほかの異性と話してるのを見るとイライラしたり」
「はい」
「とにかく、どうでもいいことで一喜一憂するよ。目が合ったとか、今日は1回も話せなかったとか、そういうどうでもいいことで浮いたり沈んだり。若干情緒不安定的な?」
「じょ、情緒不安定」
なんだか重たいワードが出てきて尻込みする。
「でも、その全部が楽しいんだよ。やめたいのに、やめたくない。そういうのの繰り返し」
「…なんか、難しいですね」
聞いてみても、やっぱりよく分かんないや。
「まあ早い話、その人が他の人のものになることを考えた時、いても経ってもいられなくなったら間違いないでしょ」
「なるほど」
ぼんやりと、雨宮さんと睦月さんが打ち合わせしている所を思い出した。
仕事の話だからついていけないのは当然で、でもやっぱり仲間外れにされてるような気持ちで。
なんとか雨宮さんの気を引けないかと思ったけれど、そんな勇気もなく結局大人しくしていたけど。
そういうのが、睦月さんにもこうして伝わっていたんだろうか。


