その後のことはあまり良く覚えていない。




いつの間にか雨宮さんが帰ってきて、今日は電車だという睦月さんと缶ビール片手に打ち合わせの続きをしていた、と思う。



その後仕事の疲れからか早々に酔った睦月さんを駅まで送ると出ていった雨宮さんの背中を見て、あぁ、本当だ、と泣きたくなった。




私は家で私と話している雨宮さんしか知らなかったんだと。



私を気遣ってくれる雨宮さんしか知らなかったのだと、今更当たり前のことに気付いてしまったのだ。






「どうしたの彩羽ぁ」





あれから数日。




ぼーっと窓の外を眺めているばかりの私を心配して、美月が眉を下げる。




あの一件から何となく元気が出なくて。




雨宮さんは朝早く出ていって夜中に帰ってきたからあまり顔を合わせていないのが唯一の救いというか。




「同居人と何かあった?」




どきり。





「ううん。全然そんなんじゃないよ」






確かに、同居人である雨宮さんとは何も無い。



何かあったのは、睦月さんとだ。




と言っても、あっちは何とも思っていないだろうけど…。






「ほら、これ見て元気出してよ」




「………げ」





いつものように美月の鞄から出てくる、雨宮さんが表紙の雑誌。





「今月はなんとロングインタビュー記事が…って、彩羽どこいくの?」




「なんかちょっと熱っぽくて。保健室行ってくるね」





今日は雑誌とはいえ雨宮さんを直視する元気、ないや。