持ってろって、これ今の今まで着てた上着じゃないですか。
肘置きの次はハンガー代わりなんて、人使いが荒いのでは?
……なんて。
心の中で文句を言ってみるけど、表情は緩む。
まるで当たり前みたいに私に私物を預けてくれたりだとか、躊躇いなく見せてくれる笑顔だとか。
嬉しくないわけ、ない。
今回は私服特集も兼ねているそうで、白いカッターシャツに細身のスキニージーンズだけになった雨宮さんはメイクさんの元へ。
元々お肌が綺麗なお陰かすぐ戻ってきた雨宮さんとカメラマンさんが打ち合わせをして、いよいよ撮影開始。
「大人しく座っててよね」
「も、もちろんです」
睦月さんに促され、すぐ側にあったパイプ椅子に腰掛ける。
周りのスタッフさんたちは忙しく動いていて少し落ち着かないなぁ、なんて思っていると睦月さんが隣に座ってきて、知らず知らずのうちに肩が強ばってしまう。


