私だけの月になってよ。



私の前を歩く彼らの背中

この大きな背中をこれからもずっと見ていくなんてこの時は想像もしていたなかった。


2人の後ろを私はついていった。すぐ近くのコンビニの前に置かれていた2つのバイク。
そしてさっき去っていった男たちの言葉を思いだした。

…―"朔夜"

「あなたたちってまさか暴走族なんですか?」

ふと私は気になり2人に問いかけてみた。

「なんだお前、俺らのこと知らねぇのかよ 珍しい女もいるもんだな」

「確かに、珍しいね」

黒髪の男の人は足を止め、私の方を向いてニコリとほほ笑んだ。さっきの男たちの笑みとは違い、気持ち悪さや怖さはなかった。

「俺らは朔夜っていう暴走族なんだ 俺はそこの総長 石元翔弥 怖がらせてごめん」

「俺は赤牙綾斗(せきが あやと) よろしくな」

2人は自己紹介をしてくれた。…―ん?石元翔弥…赤牙綾斗…この2人が!?

「あなたたちが、朔夜の総長と副総長!?」

「おっ!なんだ知ってるじゃねぇかよ」

名前だけは知っている。でも、顔は知らなかった。確かにこの2人学校の女の子たちが言ってた通り…イケメンだ。

「あなたたちの名前だけは聞いたことがあったんですけど、顔は知らなかったので」

「ほんと、変わってんな お前は」

副総長である赤牙綾斗がそう言ってきた。

「俺ら見て媚び売ってこねぇ女 あいつ以来だぜ」

「媚び売るなんて私、そんなのしたくないので」

媚びを売るなんてそんなことしたくないというよりかは嫌いというほうが正しかった。媚び売ってなんになるっていうんだ。
いいことなんて何1つないのだから。

「ほんとに、変わった子だね 君は」

「そうですか?私みたいな子ほかにいると思いますよ」

「中々いないよ 君のような子 そういえば名前聞いてなかったね」

「私、星川愛栞です」

「年は?」

「16です」

「じゃあ、俺らの2つ下か 愛栞、改めてよろしく」

人懐っこい明るい笑顔その笑顔に私は吸い込まれそうになった。
そして、私に向けて差し伸べられたその手をそっと握った。

「よろしくお願いします」

「俺たちのことは呼び捨てでいいからね」

「そうだぜ、俺のことは綾斗って呼べよ それに敬語なんて無しだからな 堅苦しいたりゃありゃしいねぇ」

「でも、先輩ですし…」

「大丈夫、気にしなくていいって 俺ら まぁ綾斗も言ってたけど堅苦しいの苦手だから」

「分かった よろしく 翔弥、綾斗」

これが"朔夜"の総長、副総長との出会いだった。
月明かりに照らされる彼らの笑顔は誰が見てもドキッとするほどかっこよかった。