私だけの月になってよ。




夕暮れがかった人通りの少ない所にあるこのお店は私にとって特別で楽になれる場所だ。

人通りが少ない分、知り合いに会うこともなく素の自分が出せる場所だった。

「淳也さん、今日も来たよ」
ここの店長である降矢 淳也(ふるや じゅんや)さんは本当に優しく私を出迎えてくれる。
深く私のことを聞こうとしない。笑顔で私の話を聞いてくれる。それくらいの関係が私にとって楽だった。

「今日も愛栞ちゃんは元気だね 今日は何がいいかな」

淳也さんのとても優しい声は私の心を和ませてくれる。
学校では別にいじめられてるわけじゃない。ただ、人が信じれないだけだ。

「オレンジジュースとオムライスがいい!」

素直に自分の好きなものを頼むと聞き覚えのある声がお店に響いた

「相変わらずお前はオレンジジュースが好きだよな」

振り向くとここで知り合った 竜我悠馬(りゅうが ゆうま)がいた。
「悠馬、久しぶりだね!」
悠馬は自分より2歳上の18歳 私は高1だから16歳だ。
黒髪にオレンジ色に近いメッシュが入っている。身長も、高く私から見てイケメンの分類にはいると思った。

「でも、オレンジジュースは100%じゃなきゃ嫌だけどね!」
「そこも変わらないのな」
「一昨日あったばっかりなのにそんなすぐ変わるわけないでしょ」

そういいながら、淳也さんから出されたオムライスを口にする。
ふわふわの卵が口いっぱいに広がる。ここのお店のオムライスが私はとても好きなんだ。

オムライスを完食し、スマホをつついていると悠馬のスマホが鳴った。

「あぁ、俺だけど そっ、分かった 今から行く」
仕事の電話なのか知らないし電話相手が誰なのかも知らない。
でも、毎回電話が来るたび悠馬の顔は怖い顔をする。

「んじゃ、店長うまかったぜ 愛栞またな」
さっきの怖い顔が嘘かのように優しい笑顔で悠馬はまた会えるかのようにまたなと言って店を出た。

「次会えるかなんて...分かんないのに」
私は淳也さんにさえ聞こえないくらい小さな声でそう呟いた。